スーツのシワは誰もが気になります。
特に腕は良く動かすので、せっかくの新しいスーツの袖にもシワが入ってイライラしますよね。
でも、シワばかりを気にしていたら動きは制限されて仕事にならないですし、ストレスもたまります。
「自分だけではないはず、いったい周りの人はどうしてるの!?」
テーラーの私達も毎日のようにシワのことを聞かれるのですが、腕のシワについて原因と考え方をお話すると、誰もが納得してシワと上手に付き合えるようになり、精神的に楽になったと感想を頂きます。
今回はスーツで一番目立つ腕のシワについて解説します。
1. スーツの腕のシワ
スーツの中でも腕のシワは特に目立ちます。
なぜ入るのか?許容範囲はどのくらいなのか?について解説します。
1-1. 動作によって入るシワ
脇の前部分とひじの内側は、シワが入る箇所です。
ここには付け根とひじの2つの関節があります。全身の中でもよく稼働する部分なので、スーツの生地が折れ曲がり、圧が掛けるのでシワになりやすいです。
トートバッグやショルダーバッグを肩にかけるなどの動作でも、ストラップを手で押さえるためにひじを曲げると片腕のみシワが入ります。
ビジネススーツでブリーフケースが最適なのもこうした理由です。
1-2. サイズが合っていないスーツの腕のシワ
サイズが合っていないスーツ、特に小さいスーツを着ているとシワが入りやすいです。
脇部分とひじの内側が汗の蒸気と体温でずっとプレスがかかった状態なので、あっという間にシワが入ります。
こうした袖が細すぎるスーツは、電話の姿勢でも脇とひじの内側にシワを作ります。
この様なシワは深く刻まれるので、終日取れにくいシワです。
適度な袖の太さのスーツを着ることで解消できます。
1-3. 二の腕のシワはスーツの構造上必要
二の腕部分のシワが気になると相談を受けますが、これはシワではありません。
この状態は必要なゆとりが溜まった状態を指します。
人間の手は日常生活や仕事では前に振る運動がほとんどです。スーツの生地は伸びない生地のため、腕を前に出しやすいように前振り設計がされています。その時にこのゆとりが必要になります。
姿勢を正した時に腕を引くため、このゆとりが溜まってシワとなって現れます。
この部分が気になるという方が多いのですが…
直立で腕を引いた状態でシワが出ないように袖を付けると、手を前に出そうとした際に引っ張られて動きにくいスーツになってしまいます。
腕を自然におろした時にゆとりが残っていてシワがない、というのが動きやすく見栄えもよい理想なスーツの袖です。
2. 腕のシワの考え方
スーツを着用すれば必ずシワは入ります。
気にしすぎると本来の目的に集中できないので、シワは当然入るものという前提でどこまでが許容範囲なのかを解説します。
2-1. 腕のシワは働いた証
スーツを着て動けばシワは入ります。ですからシワが入ったスーツというのはごく自然です。
腕のシワは上半身なのでよく目立つため気にされる方が多いです。ではどのくらいのシワが自然なのか?
朝の仕事始めの段階でシワだらけのスーツは大変みっともなく見えます。出勤前にスーツのケアがされていないのがわかるからです。
しかし、朝の段階できちんとケアされたスーツであれば、夕方や夜までに刻まれた程度のシワは不快な感じはせず、自然に見えます。一日働いて動いた証として見えるからです。
反対に夜の会食でシワひとつないスーツを着ていたら、「着替えてきたのかな?」「仕事していないのかな?」と思われ不自然に見えます。
大前提として、ケアがされているスーツであることです。そうすれば普通に着ていれば相手の方に不快感を与えません。
2-2. 腕にシワの入らないスーツ生地
機能性素材で防シワ加工がされた生地があります。
こうした生地は化繊が混毛されたものが多く、カジュアルセットアップには向いていますが生地の高級感は損なわれてしまいます。
安っぽく見える化繊を避けたい場合は、防シワ度は落ちますがウール100%の強撚糸という糸の反発力を利用した防シワ生地を選びましょう。
また、シワは光の反射によって目立ち方が異なります。
テカテカした光沢のあるスーツのシワは目立ちますが、毛羽の多いマットな光沢の生地はシワが入っても目立ちません。
3. 腕のシワを簡単に取る方法
ウール素材は羊の毛ですので湿度と熱で元に戻ろうとする復元力があります。人間の髪の毛の寝ぐせも水分を含ませてドライヤーで乾かすと元に戻るのと同じです。
スーツの腕のシワをどのように取っていくかを解説します。
3-1. スチームアイロンで腕のシワをなくす
シワをとるのに一番有効的なのはスチームアイロンの蒸気をかけ方法です。
片袖20秒もあれば簡単にシワが消えます。
蒸気には水分によってウールを柔らかくさせ、熱によって元の形に復元させる効果があります。この効果を利用します。
袖の下を引っ張り、腕の内側と脇部分のシワを引っ張るようにしてスチームをかけます。
脇部分は汗もよく吸っており雑菌が増殖しやすい部分です。スチームでシワを伸ばすのと同時に殺菌作用もあります。
3-2. 霧吹きを利用して腕のシワをとる
アイロンが手元にない場合は霧吹きで代用できます。
軽く湿らす程度にスプレーをして、シワ部分を手で伸ばしたり、裏から手を入れてたたくようにします。
スチームほど簡単に早くは消せませんが、乾く時にシワが軽減されます。
翌日の朝に向けた夜のケアに向いています。
3-3. バスルームに掛けてスーツのシワをとる
出張などでアイロンも霧吹きもない、と言った場合にバスルームの蒸気がスチームアイロンの代用になります。
シャワーを浴びた後の湿気が充満しているバスルームに上着をかけます。
シワの部分を伸ばしたり、手でたたいたりしながらしばらく吊っておき、全体が湿気を吸ったころに取り出します。
風通しの良いところに吊り直し、再度シワを伸ばしていきます。翌朝にはシワは取れます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。気になるスーツの腕のシワですが、まわりからどのように見えているかおわかりになりましたでしょうか。
スーツは毎日きちんとケアをしていれば、普通に着るだけで清潔感は伝わります。ぜひ日頃のケアを見直して、シワが入っても自信を持ってご着用ください。