スーツを買う時に「ゴージライン」という言葉を耳にしたことがあると思います。
店員さんに「なんて言いました?」と聞いていいのか迷ったあげく、ついつい知ったかぶりをしてしまいがちです。
「ゴージライン」はスーツの顔であるVゾーンにおいてとても大切な存在です。
そもそもどこにあるのか、どんな役割があるのか、どう見えるのかを簡単に理解できるよう解説します。
1. ゴージラインとは
スーツの上のエリと下のエリをつなぐ縫い目の事です。
このゴージラインがスーツの見た目の印象を大きく左右します。
現代のスーツの起源は、詰めえりの洋服です。
実際にエリを立てていくと詰めえりの形になります。
この縫い目から上の立ちエリ部分が上衿で、下の部分が下エリとなります。
上下をつなぐ縫い目がエリを返した時にゴージラインとなって表に出てきます。
2. 時代の流れによって上に下に
意識して見ると、最近のスーツと一昔前のスーツはゴージラインの高さが違うことに気が付きます。
時代によって、スーツにはトレンドがあります。
ルーズフィット、ジャストフィット、タイトフィットなどのサイズ感だったり、イタリア風、英国風、アメリカ風のシルエットが循環しています。それに合わせてゴージラインの位置も上がったり下がったりします。
流行を年代別に紹介します。
2-1 1990年代
バブル期に流行ったブランドのソフトスーツはゴージが低いです。
1990年代中頃まではその流行が引き継がれています。ゴージの角度も急です。
アルマーニのスーツがまさにそれです。
2-2 2000年代
英国の3釦スーツが流行り、Vゾーンが狭くなるのと合わせてゴージ位置も上がりました。
同時にクラシコイタリアが流行り、ゴージ位置も一気に上がりました。
ハイゴージの全盛期です。ゴージ位置が上がるとゴージの角度も肩のラインと並行くらいになりました。
2-3 2010年代
依然としてイタリアンスーツが主流ですが、一時期ほどの高さはなくやや高めで安定していました。
まだハイゴージと呼ばれる域です。エリ巾は細めのものが主流でした。
3.今主流のゴージライン
2010年代から比べるとゴージ位置が0.5㎝から1.0㎝ほど下がり気味になってきました。
理由としては、一時期ほどのタイトなサイズ感からややゆったり目になってきたためです。エリ巾もやや広めに移行しています。
まとめ
意識してみないと気が付きませんが、重要なディティールという事がわかって頂けたと思います。
たかが1.0㎝の上下ですが、されど1.0㎝といえるくらい印象が変わります。
古臭いスーツを着ているな、と思われる人のスーツのゴージラインは低いかもしれません。
サイズ感やエリ巾でも古さが出てしまいますが、実はゴージラインの高さのほうが時代を明確に表すサインです。
古いスーツを捨てるのはもったいないという気持ちもわかりますが、古くさい印象を相手に与えるわけにはいかないので定期的な入れ替えが必要ですね。