オーダースーツの購入を検討している方も既に購入経験がある方もスーツの生地選びはもちろん、裏地選びに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
色の組み合わせや柄、素材、仕様などなど徹底的に解説します。
是非オーダースーツ店に足を運ぶ前に参考にしてください。
スーツの裏地の意味
そもそもスーツにはなぜ裏地があるのでしょうか。
裏地には大きく分けて3つの役割があります。
・表地を補強して、型崩れを防ぐ
・汗を吸う、空気を閉じ込めて保温する
・すべりをよくして着心地を良くする
「丈夫になって着心地が良い」
これは、毎日着るスーツの重要なポイントです。
つまり裏地はあるかないかでいうと、あった方が確実に良いということです。
スーツの裏地の素材
裏地にはいくつか素材があります。どの素材が採用されているかによって子心地にも影響がありますので、どのような素材があるのか特徴を押さえておきましょう。
ポリエステル
石油を原料とした合成繊維です。安価で耐久性に優れており、人工的に作られているので色や柄のバリエーションが豊富です。
丈夫でシワになりづらく、また発色がよく、水に強い特徴があります。
デメリットは通気性が劣るので夏場は注意です。また静電気が起こりやいという点があります。
キュプラ
綿花くずを原料とした再生繊維です。肌ざわりがしなやかで吸湿性が良いので汗による蒸れを軽減してくれます。ポリエステルとはまた違った発色の良さがあり、上品な艶が特徴的です。
デメリットとしては、ポリエステルに比べて摩擦に弱いのでデリケートな素材ということ。汗の蒸れは軽減されますが、汗染みはできやすいです。
近年では希少性も出てきているのでコストが高く、お店によってはオプション料金がかかる場合があります。
シルク
蚕の繭をほどいて利用した高級天然繊維です。昨今ではシルクの裏地を採用したスーツはなかなかありませんが、高級スーツには使われることもあります。上質な光沢感としっとりとした肌触りから一級品であることをすぐに感じさせる代物です。
キュプラよりも更に摩擦に弱いので、着用頻度の少ないスーツにこそ相応しい裏地です。オーダースーツ店でも扱っていないお店が多いかと思います。
スーツの季節感
裏地の知識とともに、知っておかなければならないことがあります。
それはスーツの季節感。つまり普段何気なく着ているスーツにもシーズンがあるんです。
スーツの生地には、以下の4種類のシーズンに分けられます。
3シーズン用のスーツ
一般的なやや薄手のスーツ生地です。すべての基本で、お店によっては「オールシーズン」や「通年もの」という言い方をする場合もあります。
春用のスーツ
春用の生地は3シーズン用に比べて薄手で、通気性のいい生地が多いです。生地に加工がされていて暑く感じにくくしている生地もあります。
夏用のスーツ
平織りという通気性の良い織り方で作られた生地。リネン(麻)やモヘアを混ざっている生地もあり、より涼しく感じられる素材感です。シアサッカーや鹿の子などサラッとした肌触りの生地もあります。
冬用のスーツ
3シーズン用と比べたときに生地自体に厚みがあり、表面がふんわりと起毛したものもあります。見た目もさわり心地も温かみを感じさせます。
以上の4つがシーズンごとの生地の説明です。
あなたが持っているスーツはどれに当てはまるでしょうか。
ここで注意したいのは、夏用のスーツを秋冬に着たり、秋冬用スーツを夏に着てしまうと、まわりからは季節感のない無頓着な人だと思われてしまいます。
裏地選びは季節が関わってくるので、このスーツ生地の季節感も前提条件として押さえておきましょう。
スーツの裏地の総裏とは?
総裏とはジャケットの内側全面に裏地が貼られている仕様です。
スーツは通常この仕様が多いです。保温性がアップするほか、生地の透けを防止する意味もあります。
スーツの裏地を総裏にした際のメリット
メリット① 裏地を付けることで型崩れを防げる
裏地をつけることで裏から表地を補強し、シルエットをきれいに保つ役割を担っています。特に繊細な生地の場合はこの役割が大きくなります。
メリット② 裏地を付けることで表地を守る
ジャケットを椅子などに掛けておくときに、細かな汚れなどから表地を守るために上の写真のようにかけるのがベターです。その際、裏地があるないで守れる面積が大きく変わってきます。
ジャケットは着用していると背中の内側が擦れます。また、汗をかいて表地にまで染み込んでしまうとその部分から傷みやすくなります。これらの場合にも裏地をつけることによって表地を守ることができます。
メリット③裏地で温度と湿度の調整
内側に裏地という生地が一枚増えることによる保温効果があるため、秋冬のスーツでは総裏が活きてきます。
また、高価ですが、キュプラの裏地は吸湿性があるので、背中のムレを軽減させるので快適に着ることができます。
スーツの裏地を総裏にした際のデメリット
デメリット① 裏地を付けることでムレる
「総裏=暑い」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、正確には「ポリエステルの総裏=暑い」が正解です。
ポリエステルは吸湿性がない分、汗を吸わないので湿気がこもりやすいです。暑がりの方は、一度裏地の素材を確認してみましょう。上着の内ポケットの中に付いている洗濯表示の札に裏地の素材が書いてあります。
デメリット② 裏地を付けると真夏は暑い
キュプラ素材は吸湿性があり快適と述べましたが、それでも真夏はさすがに暑いです。
真夏の外回りなどで使うスーツであれば、背抜きのほうが涼しく快適です。
こんな時のスーツの裏地は総裏がオススメ
① 3シーズン用スーツと冬用スーツの裏地
総裏のメリット③で紹介したように、裏地には体感温度を調節してくれる機能があります。気温の変化の激しい春や秋では、よっぽど暑がりの方でない限り総裏をおすすめします。
② 高級な表地のスーツ
高級な表地は繊細です。繊細な生地の場合は、総裏のメリット①と②でお話しした理由から総裏をおすすめします。高級なスーツを長持ちさせるためには総裏です。
スーツの裏地 | 背抜きとは?
背抜きは裏地の背中の部分を半分~3/4ほどなくした仕様で、こうすることで通気性を高めています。
「じゃあ、春夏と盛夏用は全部背抜きでいいじゃないか」となりそうですが、背抜きが適さないケースも存在します。
そこには落とし穴があるので、まとめて解説していきたいと思います。
スーツの裏地を背抜きにするメリット
メリット① 裏地がないと涼しい
背抜きは裏地がないので通気性が上がり、涼しく感じることができます。
メリット② 裏地がないと軽くなる
裏地の面積が減っているので、ジャケットの重量は軽くなります。
劇的に変わるわけではありませんが、軽量な夏物生地と合わせて軽やかな着心地にすることができます。
スーツの裏地を背抜きにするデメリット
デメリット① 裏地がないと表地が傷みやすい
裏地は表地を守るということは先ほど説明しましたが、汗や擦れが生地に直接あたることで表地は傷みやすくなります。また、総裏と比べてスーツの型崩れも発生しやすくなります。
デメリット② 裏地がないと背中部分が透ける
春夏用の生地は薄いので透ける場合があります。上の画像のように透けてしまうと、背抜きということがまわりの人にわかってしまいます。
「背抜き=春夏」というイメージがあるので、冬のビジネスシーンでは個人の感性で安っぽいと思われてしまうことがあるかもしれません。
こんな時のスーツ裏地は背抜きがオススメ
その① 真夏用のスーツの裏地
真夏は背抜きの方が間違いなく涼しいです。夏にしか着ないスーツとして買うのであれば、背抜きを選んだ方が快適です。
その② ポリエステルの裏地のスーツ
ポリエステルの裏地は安価なのですが、ムレやすいという特徴があります。
夏用のスーツでポリエステルの裏地を使う場合には、背抜きにすれば暑さは多少軽減されます。
スーツの裏地の色柄
裏地の素材や仕様が分かったところで柄の印象や組み合わせ例をいくつか紹介していきます。
色柄はオーダースーツ店によって取り扱っている裏地が異なるので選べる幅に違いがあります。
当店で取り扱っているのは「無地」「小紋ドット柄」「ストライプ柄」の3パターンです。それぞれの印象を紹介します。
無地
既製品のスーツは無地の裏地が付いていることがほとんどです。スーツの柄に悪い影響を与えないので、どんな柄のスーツにも合わせることが出来ます。初心者やシンプルなスタイルが好きな方にオススメです。
小紋ドット柄
主張が強すぎない柄でさりげないお洒落感を演出できます。スーツの柄がチェックやストライプでも違和感を与えることなく馴染むのでオーダースーツが初めての方でも取り入れやすいでしょう。
ストライプ柄
男性なら馴染み深いストライプ柄なので男らしい印象を与えることが出来ます。主張がある柄なので、スーツの柄は無地などの時に取り入れた方がバランスが取れます。
その他のスーツ裏地の柄
当店にはないですが、ペイズリー柄や花をモチーフにしたボタニカル柄、一風変わった幾何学模様などなど色々な裏地を取り扱っているお店もあります。
どれも個性を主張する裏地なので、オーダースーツに慣れてきた方や周りと被らないスーツが欲しいという方には良いのかもしれません。
※裏地とはいえ、やりすぎには注意です。
スーツ生地と裏地の組み合わせ例
スーツがネイビーの場合
ネイビー×同色
迷ったら同色でまとめるのがオススメです。ネイビーであれば、同じ色のネイビーやブルー系などはまず間違いないでしょう。同色にまとめることでネクタイのコーディネートに左右されないのもメリットと言えます。
ネイビー×グレー
攻めすぎず守りすぎない丁度いいのがグレーの裏地。ネイビーとの相性も抜群で大人っぽい印象に仕上がります。グレーは色を持たない無彩色の類になるので、こちらも同様にネクタイのコーディネートに左右されません。
ネイビー×ブラウン
アクセントとして遊びを入れるならブラウンがオススメです。ネイビー×ブラウンと言えばイタリアの伝統的なコーディネートで相性は抜群。アクセント系で言えば、ブラウン以外にはワインレッドやイエロー系も個性的な雰囲気になります。オーダースーツを複数着持っている方にはオススメです。
スーツがグレーの場合
グレー×ネイビー
ネイビースーツにグレーの裏地の反転バージョン。落ち着いた印象にさりげないお洒落を感じさせる配色です。寒色系は馴染み深い色味なのでいやらしい印象にならないので、同色系の次に取り入れたい色味です。
グレー×ブラウン
知的な印象のブラウン。アースカラーとしての落ち着きと柔らかい優しい雰囲気に仕上がります。革靴やベルトも同様なブラウン系で合わせると統一感が一層増し、スーツの着こなしに慣れた印象を与えることが出来ます。
チャコールグレー×ワインレッド
赤すぎないワインレッドと言うのがポイント。大人の余裕を感じさせる深みのあるワインだからこそ、いやらしさのない配色に仕上がります。パーティシーンなどには打ってつけです。
ご紹介した例は実際にお客様からご支持をいただいた組み合わせなので是非参考にしてください。色味で季節感も出るので、どの季節に着用するのかも加味して選ぶといいでしょう。
スーツの裏地のまとめ
初めてオーダースーツを購入される方は裏地選びに失敗してしまうケースがあるので、慎重に選びましょう。ド派手な裏地がチラッと見えただけで印象が下がる可能性もあり得ます。TPOを考えずお洒落をするためにオーダースーツを購入していると思われては本末転倒です。生地選びと同様にどんな時にスーツを着るのかをイメージしながら選んでいくと自然と完成してきます。是非担当スタッフさんと情報を共有しながらご相談してみてください。