「カシミヤのコート、ずっと気になっている」
「ブランドショップで、100万円だった」
「オーダーなら40万円ぐらいらしい。ただ、本当に自分に必要?」
そう自問自答されている方は、少なくないはずです。
創業1888年の銀座のオーダースーツ店として、カシミヤコートをお仕立てしてきた経験から、
「カシミヤのチェスターコートは、本当に必要か?」をお伝えします。
1. カシミヤコートの相場が上がっています

カシミヤの相場は数年で大きく上昇しました。
世界的なブランドショップで、カシミヤのコートを買おうとすれば、100万円を超えるのももはや珍しくありません。
一方、本格的なオーダー店でカシミヤのコートを作った場合、40万円前後が目安となります。
数字だけ見れば、確かに「お値打ち」と感じられるかもしれません。
しかし、40万円という金額は、スーツ2着分。
決して安い買い物ではありません。
「お値打ちだから」だけで決めるには、慎重に考えるべき金額です。
だからこそ、購入する前にいくつか考えてみていただきたいのです。
どこで買うと、いくらになるのか?
| 販売場所 | 価格の目安 |
|---|---|
| ゼニアショップ(既製) | 88万円 |
| アルマーニ(既製) | 99万円 |
| トムフォード(既製) | 125万円 |
| オーダースーツ店 | 40万円前後 |
※価格は税別、時期により変動します
同じカシミヤ100%のチェスターコートでも、これだけの差があります。
また、ゼニアショップはゼニアのカシミヤを使用しますが、それ以外のショップは必ずしもゼニアのカシミヤを使っているとは限りません。
もしかすると、ゼニアのカシミヤよりランクも2ランクも下の生地かもしれません。
オーダースーツ店でもゼニアのカシミヤでコートを作る店は少ないです。なぜなら、価格が60万円を超えてしまうので、ゼニアよりランク下のカシミヤを使用します。
これらの価格の差は何なのか?詳しくは、3章でお話しします。
2. カシミヤコートの購入前に考える 3つの問い
お客様がよく口にされる、あるいは頭の中で考えておられる「3つの問い」があります。
カシミヤのコートをご検討の方は、ご自身に自問自答してみてください。
- このコートをいつ?どこで着るのか?
- ビジネスで着る?それともプライベート?
- 何年先まで着たいと思っていますか?
この3つの問いにご自身で納得できる答えがあるのなら、カシミヤコートは良い投資になるはずです。
しかし逆に答えがぼんやりしているなら、少しお考えになってからでも遅くはありません。
それぞれの問いについて、わたくしどもの経験からお伝えします。
2-1. 問1 このコートをいつ着る?どこで着る?
カシミヤコートには独特の存在感があります。
しっとりとした触感、上質な光沢、上品さ。
ウールのコートでは出せないカシミヤならではの魅力です。
カシミヤコートは、着ている時間よりも、脱ぐ瞬間、預ける瞬間にこそ、その価値が伝わります。
・スーツの上に羽織る冬のビジネスシーン
・会食を終えて、夜の街を歩くとき
・お店や会場で、コートを預けるとき
・ジーンズやスニーカーなどスポーティーな装い
・カジュアルなレストランなど、気軽な食事で
・カジュアルな人が多く、上質さが浮いてしまう職場
カシミヤコートの魅力が最も引き立つのは、やはりスーツやジャケットスタイルです。
全体にきちんと感がある装いの場面に向きます。
2-2. 問2 ビジネスで?それともプライベートで?

カシミヤコートを着るのに一番ふさわしいのは、スーツの上に羽織るビジネスシーンです。
スーツのシルエットをきれいに包み込み、肩のラインがすっと整う。
通勤や商談、人と会う場面で上品な印象を作ってくれます。
コートをビジネスで着用するのが中心なら、スーツとの相性を考えて選ぶことをおすすめします。
一方、プライベートで着る方も、もちろんいらっしゃいます。
スーツは着ないけれど、コートだけは本格的なものを欲しい。
「冬の特別な外出のための一着」として、カシミヤコートを大切にしたい方も少なくありません。
2-3. 問3 何年先まで着たいですか?
カシミヤコートは本来長く着るためのものです。
10年、15年と着続けることを考えると、40万円の金額の意味が変わってきます。
年間で換算すれば、3万円台。冬の3〜4ヶ月着るとして、月にすれば数千円。
シーズン中に頻繁に着用すれば、1回のコストはファストファッションのコートと変わりません。
ただし、長く着るためにはいくつかの条件があります。
生地の品質、型紙の精度、仕立ての丁寧さ。
そして何より、流行に左右されない普遍的なシルエット。
トレンドを強く意識したデザインは、3〜5年で古びてしまいます。
一方、正統派のチェスターコートのシルエットは何十年経っても変わりません。
長く着られるカシミヤコートを選ぶなら、「今っぽさ」よりも「変わらない美しさ」を優先されることをおすすめします。
3. ブランドショップとオーダーの差は何?
ここで、最初のお話に戻ります。
世界的ブランドのカシミヤチェスターコートが100万円、オーダーで40万円。
この60万円の差は何の差なのでしょうか?
| 項目 | ブランド既製コート | オーダー店のオーダーコート |
|---|---|---|
| 生地 | 上質なカシミヤ | 同等か、それ以上のカシミヤ |
| サイズ | 既製のサイズから選ぶ | 採寸して専用の型紙を作成 |
| シルエット | 平均的な体型を想定 | 一人ひとりに合わせる |
| 仮縫い | なし | できる |
| 価格 | ブランド料を含む | 生地代と仕立て代 |
生地そのものの品質は、必ずしもブランドの方が上というわけではありません。
世界的に有名な生地メーカーのゼニアのカシミヤであれば、オーダースーツ店でも同じカシミヤで仕立てられます。
差として残るのは「ブランドの看板」と「シルエット」。
ブランドの看板に価値を見出される方は、ハイブランドショップでの購入が向いています。
シルエットの美しさに価値を見出される方は、オーダーが合うでしょう。
どちらが正解、ということはありません。
ご自身が「何にお金を払いたいか」によって、購入するべきお店が変わってくるのです。
4. カシミヤ100%でも、質はまったく違います
この章では、同じ「カシミヤ100%」の表記でも中身に差があることをお伝えします。
カシミヤは、セレクトショップからファストファッションまで幅広く使われる素材です。数万円のコートにも「カシミヤ100%」と書かれています。
同じ表記なのに、なぜ価格が10倍以上も違うのでしょうか。
4-1. 上質なカシミヤを見分ける5つの基準
- 糸の細さ 細いほどふわっと軽く高級
- 原毛の白さ 白い毛ほど発色が澄み、ツヤやか
- 育った環境 寒い高地の山羊ほど、柔らかな産毛
- 仕上げの水と温度 軟水&低温ほど、とろける手ざわりに
- 選別と検品の手間 良質な毛だけを残して「極上」を生み出す
この5つが揃ったものが、上質なカシミヤです。
そして、この基準をすべて高い水準で満たしているのが、ゼニアのカシミヤです。
4-2 ゼニアが別格といわれる3つの理由
1つ目は、原料の選び方です。
一般に「カシミヤ」と呼べる最低ラインは、繊維の太さが16.5ミクロン。ゼニアが使うのは、そのさらに先、15ミクロン未満の産毛だけです。
しかも「真っ白」と判定されたぶ毛に限定します。世界の流通量で、わずか7%。細さと白さを、最高水準で保っているということです。
- 一般にカシミヤと呼べる最低ラインは16.5ミクロン
- ゼニアが使うのはそのさらに先、15ミクロン未満の産毛だけ
- しかも「真っ白」と判定されたうぶ毛に限定するため、世界流通量でわずか7%
→ カシミヤの「細さ」と「白さ」を最高水準でキープ

2つ目は、仕上げの環境です。
イタリア・ビエラ渓谷の軟水(硬度0.6°dH)でじっくりと仕上げます。マイナス15度の低温縮絨(繊維を縮めて密度を上げる工程)で糸に無理をかけません。
過酷な寒暖差の中で、カシミヤの繊維は柔らかく細くなります。
- アルプスの軟水(硬度0.6°dH)でじっくりと仕上げる
- ー15度の低温縮絨で糸に無理をかけない
→ 過酷な寒暖差で、カシミヤ繊維は柔らかく細くなります

3つ目は、検品にかける手間です。
集めた良質な原毛から、太さ・色味・傷で約3分の2を間引きます。仕上がった反物は、職人が手で確かめます。
歩留まりを犠牲にした、この選別と検品が、しっとり滑らかな肌ざわりを生んでいます。
- 集めた良質な原毛から、太さ・色味・傷で約3分の2を大胆に間引き
- 仕上がったカシミヤの反物を、職人がハンドチェック
→ 徹底した厳選と検品が、しっとり滑らかな肌ざわりを生み出します。

5. スプレーモのカシミヤコート
ここで、わたくしどものカシミヤコートについてお話しさせてください。
カシミヤは、セレクトショップからファストファッションまで幅広く使われるメジャーな素材。
そのため「カシミヤ=どれも同じ高級素材」というイメージをお持ちの方が少なくありません。
ですが、カシミヤには質の違いがあります。
原毛の細さ、白さ、育った環境。
同じ「カシミヤ100%」の表記でも、その中身には大きな差があるのです。
そして、その中でも超が付くほどのカシミヤを買い付けているのが、ゼニアです。


写真からでも伝わるこのツヤ。おそらく想像されていた以上の質感だと思います。
当店でお仕立てするコートの中心は、ゼニアのカシミヤ100%のチェスターコートです。
カシミヤのツヤ、正統派のシルエット。
流行に左右されず、長く着れる一着になります。
正統派のチェスターコート

当店では、ダブルのコートやカジュアルなコートもお仕立て可能です。
ただ、当店のお客様の多くが選ぶのは、やはり正統派のチェスターコート。
スーツとの相性、改まった場での合わせやすさ、長く着続けるための飽きのこない美しさ。
こうしたことを考えると、自然な選択になるのだと思います。
当店でスーツをお作りの方は、その型紙を活かして、最適なサイズ感のコートをお仕立てできます。
6. 「500着お仕立てしてお直しゼロ」という事実

最後に、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
当店では、これまでの10年で500着以上のカシミヤコートを仕立ててきました。
そのなかで、お直しをご依頼いただいた方は一人もいらっしゃいません。
仮縫いで細部を調整するので、仕上がった後に「ここが合わない」ということがほぼないです。
これは、当店の仕立てが完璧、ということでは決してありません。
ゼニアのカシミヤという信頼できる生地と、仮縫いを大切にする本格オーダーの工程。
その積み重ねが、結果としてこうした実績につながっているのだと考えています。
40万円という金額です。
だからこそ、安心してご検討いただけるように、当店ができることを丁寧に積み重ねます。
7. カシミヤのチェスターコートはこんな方に
ここまでお読みいただいた方は、ご自身に「カシミヤコートが必要なのか」が見えてきたのではないでしょうか。
・ビジネススーツの上に羽織るコートとして
・流行に左右されない正統派のシルエットがお好きな方
・10年、15年と長く着続けたい方
・冬の特別な外出のための一着として
・かしこまった場面、節目のシーンで着る
・普段着としてカジュアルに着崩したい方
・スーツを着る機会も、かしこまった場面のない方
・トレンドに敏感で、数年で買い替えたいという方
「カシミヤのチェスターコートが絶対」とは言いません。
ご自身のライフスタイル、装いの好み、活用シーンを考えて、ご判断ください。




8. カシミヤのコートに興味がある方へ

まずは、本物のゼニアのカシミヤを実際に触れていただくことをおすすめします。
写真では伝わらないカシミヤ独特の触感とツヤ感を、ぜひご自身の五感で確かめてみてください。
それで「これだ」と感じたら、ご自身の体型に合ったコートをお仕立てください。
スプレーモは、明治21年(1888年)に岐阜で創業し、138年にわたってオーダースーツを仕立ててきました。
銀座の店舗では、ゼニアのカシミヤを実際にご覧いただけます。
完全予約制にはなりますが、どうぞお気軽にご予約ください。

