スーツの上着、ジャケットとして着てもいい?

「スーツの上着が何着かあるので、ジャケットとして着回せない?」

「わざわざジャケットを買わなくても、手持ちので足りるのでは?」

リモートワークが定着し、スーツを着る機会が減った今、そう考えられる方は少なくないはずです。

結論から申し上げます。

スーツの上着とジャケットは、見た目は似ていてもまったく別のものです。

そして、スーツの上着をジャケット代わりに着るのは、正直なところ、あまりおすすめできません。

なぜなのか?

創業1888年の銀座のオーダースーツ専門店として、その理由を、できるだけ具体的にお伝えします。

1. スーツの上着とジャケットは何が違う?

「同じ上着なのに、何が違うのか?」

そう思われるかもしれませんが、スーツの上着とジャケットは、

作りも、生地も、目指しているものも、まるで違います。

大きく、5つの違いがあります。

項目スーツの上着ジャケット
ポケットフタ付き(フォーマル)貼り付け(スポーティー)
生地表面ツルツルで光沢ありざっくりしてツヤ控えめ
芯地毛芯使用で構築的アンコンでソフトに
素材ウール100%が主流ウールに他素材を混紡
全体の印象きちんとフォーマル感カジュアル感

では、これらを一つずつ見ていきましょう。

1-1. ポケットの違い

スーツの上着のポケットは、フタ(フラップ)の付いたきちんとした作りです。

一方、ジャケットは貼り付けのアウトポケットがよく使われます。

これは、スポーティーさを演出するための見せ方です。

ポケットひとつとっても、目指している方向が違うのです。

1-2. 生地の違い

スーツの生地は、ツルツルとした光沢のある仕上がりが主流です。

ジャケットの生地はざっくりとした凹凸感があり、ツヤはほとんどありません。

並べてみると、表情がまったく違います。

1-3. 芯地の違い

スーツの上着は、毛芯を使った、構築的な作りが基本です。

肩や胸に芯を入れ、きちんとした立体感を作ります。

ジャケットはアンコン(芯地を使わない)のソフトな仕上がりを目指すものが多くあります。

肩の力が抜けた、軽やかな着心地です。

1-4. 素材の違い

スーツは、ウール100%が主流です。

ジャケットは、ウールにリネンやシルク、カシミヤなどを混ぜた生地が多く使われます。

異なる素材を混ぜることで、独特の表情や風合いが生まれます。

ここも、ジャケットならではの個性です。

2. スーツの上着をジャケット代わりにできる?

では、上記の5つの違いを踏まえたうえで、

「スーツの上着を、ジャケットとして着回す」ことはできるのか?

理屈の上ではできなくもありません。

たとえば、紺の無地のスーツであれば「上着だけを紺のジャケットのように着られなくもない」とは言えます。

ただ、当店のお客様で、そのように着ている方はほぼいらっしゃいません。

理由は、2つあります。

1つは、これまでお話ししてきた「作りの違い」です。

ツルツルとした光沢のあるスーツの上着を単品で着ると、どうしてもジャケットらしい「こなれた印象」にはなりにくいのです。

そしてもう1つ、もっと現実的な問題があります。

スーツの上着使いで起こるトラブル

スーツの上着だけをジャケット代わりに頻繁に着てしまうと、上着だけが先に着古されていきます。

そうなると、いざスーツとして着た時に、上着とスラックスの状態が揃わずに、スーツとして機能しなくなってしまうのです。

つまり、スーツの上着を単品使いするのは、

「ジャケットとしても中途半端。スーツとしても消耗させる」

という、二重にもったいない選択になりがちなのです。

それなら、ジャケットを一着、ちゃんと持っておく。

その方がスーツもジャケットも、長くきれいに着ていただけます。

3. では、どんなジャケットを選べばいいのか?

「ジャケットを一着持つなら、どうやって選べばいいのか?」

ここからは、ジャケット選びのお話です。

ジャケットには、いくつかの「王道」があります。

3-1. 紺のブレザー(紺ブレ)

ジャケットの王道といえば、紺ブレザーです。

紺無地に金属ボタンを合わせた、最も格式のある一着。

ビジネスでもプライベートでも着られる、汎用性の高さが魅力です。

ただ、紺ブレは「どこでも手に入る」一着でもあります。

だからこそ、生地や仕立てにこだわると、はっきりと差が出ます。

紺ブレについては、別の記事で詳しくお話ししています。

3-2. グレー・茶系のジャケット

紺ブレが「王道」なら、グレーや茶系のジャケットは「おしゃれな装い」です。

ビジネスシーンでもよく着られます。

ネイビーの無地ほどかしこまらず、それでいて品のある印象。

2着目として、グレーやブラウン系のジャケットを選ぶ方も多いです。

3-3. 柄物のジャケット

チェックや杢調など、柄や織りに表情のあるジャケットも人気があります。

一着で華やかになって、「オシャレを楽しんでいる」印象になります。

はじめてジャケットをお求めになる方が、紺ブレよりもこうした色柄のあるジャケットを選ばれることも少なくありません。

4. ジャケットこそ、オーダーの差が出る

ジャケットは、スーツ以上に「個性」が出る一着です。

生地の色や柄、そして表情、肩の作り…

選択肢が多いぶん、既製品では「ちょうどいい一着」に出会いにくいのです。

そして、アンコンのようなソフトな作りのジャケットは、肩や着丈が合わないと印象が変わってしまいます。

ビジネスシーンで、大き過ぎる、長過ぎるは、ルーズでだらしなく見えることもあります。

だからこそ、ジャケットは、オーダーの差がはっきりと表れます。

わたくしどもでは、お客様の採寸データを基に仮縫いをしてお作りします。

世界的な生地メーカーであるゼニアは、ジャケット専用の生地ブックを毎シーズン作っています。

紺はもちろん、グレー、茶、織りや柄のあるものまで、ジャケット生地の種類は豊富です。

5. ジャケットのオーダーに興味を持たれたら

まずは、実際にゼニアの生地に触れていただくことをおすすめします。

「ざっくりとした織り」「混紡ならではの風合い」は、写真やテキストではなかなか伝わりません。

ご自身の手で、スーツの生地との違いを確かめていただくのがいちばんです。

スプレーモは、明治21年(1888年)に岐阜で創業し、136年にわたってオーダー店を営んでおります。

銀座の店舗では、ゼニアをはじめとしたジャケット用の生地を実際にご覧いただけます。

完全予約制にはなりますが、どうぞお気軽にご予約ください。

あわせてお読みください。

 (オーダー店選びの判断軸について)

(本格的なオーダースーツについて)

(オーダーで仕立てるコートについて)

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