“シワに強い”というキャッチコピーのゼニアトラベラー。

「興味はあるけど実際どうなの？」と思う人も多いはず。

今回はそんな疑問を解決すべく、実際にスタッフがゼニア　トラベラーでスーツを仕立てて、シワの強さを実験しました。

同じゼニアの生地のトロフェオと比較しながら紹介します。

1. ゼニアのトラベラーとは

ゼニアトラベラーとは、紳士服地の最高峰エルメネジルド・ゼニアのシリーズのひとつです。

トラベラーは強撚糸という糸で織られた生地なので、他のゼニアの生地と比較して「シワに強い生地」と言われます。

強撚糸とは、ウールの原毛を撚って糸を形成するときに、反発して元の形状に戻りやすいよう撚られた糸のことです。

この強撚糸がもとに戻ろうとする作用を利用して、トラベラーはシワに強い生地になるのです。

2. トラベラーとトロフェオの生地比較

トラベラーを同じゼニアの定番生地であるトロフェオと比較して、

トラベラーの見た目の特徴を解説していきます。

2-1. トラベラーとトロフェオの触感の違い

トロフェオとトラベラーを触って比較します。

トロフェオはしっとりと滑らかで柔らかい触感です。トラベラーは張りがあり、やや硬めの触感です。

握り込むとトロフェオはクシャっとつぶれていきます。トラベラーは握り込んでも張りがあり、スプリングのように戻ろうとします。これがシワの強さの秘訣です。

生地を垂らした時の状態をドレープといいます。

トロフェオは液体のように体に吸い付き、滑らかなドレープ感です。

トラベラーは張り感があるために生地がしっかりと立ちながらドレープが生まれます。

2-2. トラベラーとトロフェオの光沢の違い

生地の光沢感を比較します。

トロフェオはスーパー150‘s相当の細い糸を使用している為、繊細な光沢感があります。動いた時に生地の滑らかさが伝わります。

トラベラーもスーツとしては十分な光沢がありますが、トロフェオに比べると光沢はややマットで硬質感が伝わります。

3. トラベラーとトロフェオを一日着用して比較

実際にスタッフが仕立てたトラベラーのスーツを着用します。

ここではトラベラーとトロフェオでシワの入りやすさを比較していきます。

※着用の回数や条件、サイズ感により個体差があります。すべてが解説のようにはなりません。

写真左がトロフェオのスーツ、右がトラベラーのスーツです。

全体でみるとトラベラーの方がややシワが浅いことが分かります。

特にシワが入りやすい3カ所に注目してみましょう。

【上着の袖】

PC作業で腕を曲げると脇と腕の関節部分にシワが入ります。

トロフェオのほうが深いシワが入っています。

トラベラーにもシワが入りますが、トロフェオほど深くありません。

【スラックスの腰回り】

座った時に腰回りにシワが入ります。トロフェオは腰からモモにかけてシワが入りました。トラベラーは腰回りのみでモモ周りは若干シワが残る程度です。

【スラックスの膝裏】

しゃがんだり、立ったりを繰り返すとヒザ裏にシワが入ります。上着同様、トラベラーのほうがシワの深さが浅いです。

4. スーツを一晩吊るして比較

今度は先程のスーツを一晩ハンガーに吊って、シワの回復力を比較します。

【着用後】

【一日後】

プレスやスチームを当てずに、そのまま着用しました。

トロフェオは腕の関節部分とヒザ裏にシワが残っています。

トラベラーは完全にシワが消えたわけではありませんが、トロフェオに比べると回復をしています。

ヒザ裏はかなりの差が出ました。トラベラーのシワは若干残るくらいに回復しています。

5. トラベラーとトロフェオの比較の総括　

「トラベラーはシワに強かった！」といえます。

しかし、現在化繊入り機能素材の防シワスーツに比べると、完璧にシワが消えてなくなるというわけではありません。あくまでもゼニア社の生地の中で比べるとシワに強いという印象です。

やはりトラベラーであっても定期的なアイロンによるプレスをすることで見栄えの良いスーツになります。機能素材のメンテナンスフリーのスーツは簡単に扱えてよいのですが、天然繊維ならではの光沢感、ドレープ感、肌触り、のような高級感があるとは言えません。

トラベラーは「高級スーツにふさわしいシワ軽減素材」であると思います。

ビジネスマンが“移動が多い出張に”、“作業が多い日に”、“立て続けに商談がある日に”、ピッタリなスーツです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。トラベラーの魅力は伝わりましたか？「とても便利！」と思った人もいれば、「なんだ、手入れが必要なのか」と思った人もいると思います。

手入れは面倒ですがケアをしっかりするからこそ、周囲を魅了するスーツとも言えます。スーツに限った事ではなく、シャツ、ネクタイ、靴、カバン、革小物、全てにおいて言えます。

トラベラーは高級スーツに見せたいけど、ケアも簡単にしたい、というちょっと欲張りな人の要望をかなえる素材ですね。