スーツを選ぶとき、多くの人が注目するのは肩まわりやシルエット、生地の質感などかもしれません。
しかし、仕立ての良さやセンスは、実は「袖口のボタン」にも表れるのをご存じですか?
「袖にボタンが付いていない?」「ボタンの数がいつもと違う?」
そんな“違和感”を抱いた経験がある方も多いのではないでしょうか。
今回は、あまり注目されないスーツ選びの密かに重要なポイント、「袖ボタン」の種類や意味、着用マナーについて詳しく解説していきます。
1. スーツの袖ボタンは「飾り?」ー その由来と意味
現代のスーツでは、袖のボタンはほとんどが装飾的な意味合いを持っています。
「医者が袖口を開いて腕まくりするため」「戦地で鼻水を袖で拭かせないようにするため」などのさまざまな説がありますが、いずれにせよ今では機能性よりもデザイン性や格式感の演出が主目的です。
目立たないパーツですが、だからこそ「こだわり」が光る部分でもあります。
2. 袖ボタンの「数」にこめられたメッセージ
袖ボタンは3個や4個が普通ですが、大きなボタンを1個使ったりなどいろんな付け方があります。
そして袖ボタンの個数にも、着用マナーがあったりシーンによっては向き不向きもあるのです。
2-1.一般的なスーツの袖ボタンは3〜4個
スーツの袖ボタンは、3つまたは4つがスタンダード。
どちらを選んでもフォーマル度に違いはなく、個人の好みで決めてOKです。
3つボタン:軽快な印象
4つボタン:落ち着いた印象、よりクラシックな雰囲気に
2つボタン:カジュアルなブレザーやアンコンジャケット
5つ以上:ヨーロッパ系ブランドに多く見られ、個性的で主張の強い印象
ビジネスシーンでは、3〜4個が安心です。
2-2.「ボタンがないスーツ」には理由がある?
袖にボタンがない場合は、2つの理由が考えられます。
① デザイン上あえてボタンを付けていない
ナイロン系ジャケットやアンコンジャケット(肩パッド・芯地なしの軽い仕立て)では、袖をまくれるようにあえてボタンを付けないケースがあります。
② セレクトショップなどで“仮仕様”になっている
既製品でも、一部のセレクトショップではボタンを後付け前提で販売します。
これは袖丈の微調整を想定してのこと。店舗で有料オプションでボタンを付けてくれる場合もあります。
3.スーツの袖仕様のこだわり
次は袖の仕様の違いについてです。
既製品では袖の仕様を選ぶことはできませんが、オーダーメイドであれば細かく指定できます。
3-1. 開き見せ VS 本切羽(ほんせっぱ)
開き見せ(フェイクボタンホール):既製品に多い。袖口は開かず、見た目だけ本物のように仕立てる。既製品はほぼこの仕様です。
本切羽(リアルボタンホール):実際にボタンで袖が開く仕様。オーダーや高級既製スーツに見られます。オーダーであれば袖の長さがしっかり決められるので穴を開けても問題ないのです。つまり本切羽はオーダーの醍醐味と言えます。
この2つの仕様はどちらを選んでも仕事やフォーマルでも関係ありません。好きな方をお選びください。
本切羽は、まさにオーダーならではの象徴的ディテール。「一番下のボタンを外して着る」など、さりげない演出で語れる一着になります。
3-2. 並べと重ね
並べボタン:フォーマル感が強く、冠婚葬祭にも適している
重ねボタン:イタリアンな雰囲気で、こだわりや遊び心を感じさせる仕様
この2つの違いによる着用マナーは1つだけで、冠婚葬祭で着るシーン。冠婚葬祭用は「並べボタン」にしましょう。
スーツの袖ボタンのまとめ
袖のボタンは、単なる飾りと思われがちですが、そこに宿るのは仕立ての美意識と哲学。
「3つ or 4つ」が定番、好みでOK
「ない」のもちゃんと理由あり!
「開き見せ or 本切羽」「並べ or 重ね」もチェックポイント!
ぜひスーツ選びの際は、袖口にも目を向けてみてください。