オーダースーツ を作る際に重要なのが「生地選び」と「仕立て」です。
身体にぴったりのスーツが出来たとしても、選んだ生地がイマイチであれば見た目はそれなりに。
逆に、どれだけ生地やデザインがカッコ良くても、身体に合っていないとマイナスの印象に。
このページでは、スーツをオーダーする際に重要な「生地選び」と「仕立て」について解説します。
オーダースーツについてお悩みの方はぜひ参考にしてください。
1. オーダースーツ生地の種類
オーダースーツの楽しみと言えば、生地の色や柄を自分の好みで選べることです。
どんな色にするか?どんな柄で?
どのシーズンの生地にするのか?など選ぶ方法はいろいろです。
ここでは、生地の選び方について順にお話ししていきます。
1-1. 生産国で変わるオーダースーツ用生地の特徴
スーツの生地は「イタリア製」「イギリス製」「日本製」の3つが中心で、それぞれ特徴が異なります。
さっそく各国ごとの生地の特徴を解説していきます。
イタリア製のオーダー生地
イタリアの生地は細糸を使用するので、触り心地が滑らかで軽いのが特徴。
そのため、イタリア製の生地で作られたスーツは軽くソフトな仕上がりになります。
イタリア製の生地が人気なのは、触り心地や着心地だけではなく選べる色柄のバリエーションが豊富だということです。
また、イギリス製生地に定番の色柄が多いのと比べて、イタリアメーカーは毎シーズンごとに新作を投入。
感性豊かなイタリア人が作るお洒落な生地は世界中で人気があります。
【代表的なイタリア製のスーツ生地メーカー】
エルメネジルド・ゼニア、ロロ・ピアーナ、カノニコ
イギリス製オーダースーツ生地
イタリア製に比べてイギリス製は太い糸を使用するので、しっかりとしたハリのある耐久性に優れた生地となります。
そのため、出来上がるスーツもやや重量があって、かっちりとした仕上がり。
生地は伝統を重んじるお国柄だけに、定番の色柄が多いです。
英国ならではの柄といえば、はっきりとした太いストライプやかなり強めに出たチェック柄などが挙げられます。
【代表的なイギリス製のオーダー生地メーカー】
スキャバル、ハリソンズ、ジョンフォスター、ドーメル(英仏)
国産オーダースーツ生地
日本国産の生地は、上記2つに比べて価格も安く機能性に優れた生地が多いです。
ウールとポリエステルを混紡して作られた生地などに人気があります。
国産の色柄は、独自のデザインというよりもイタリア製に似せたものが多い印象で、デザイン性よりも機能性を重視した作りです。
【代表的な国産オーダースーツ生地メーカー】
御幸毛織、ニッケ、葛利毛織
1-2. スーツを着用するシーズンでの生地の違い
スーツ用の生地はシーズンで3つに分けることができます。
「夏用」「冬用」「春秋冬のスリーシーズン用」の3つ。
3つの生地で大きく違うのは、生地の厚さと織り方です。
夏用の生地は薄く、冬用は厚くなります。
織り方は、下記の2種類あります。
平織りの生地
主に夏用のスーツに使われ、タテ糸とヨコ糸が一回ずつ浮き沈みする織り方です。
タテ糸とヨコ糸の間に隙間が生まれるので、通気性が良くなります。
特徴としては、通気性と涼しさを追求した生地のため、生地の表面にはツヤはなく耐久性は低め。
夏のスーツ、ジャケットに使われる織り方です。
例 ゼニアのトロピカルやクールエフェクト
綾織りの生地
秋冬用に使われ、タテ糸とヨコ糸が浮き沈みを繰り返す織り方です。
特徴としては、斜めに綾が浮き出る織り方で、生地表面にツヤが出やすいということ。
また、触り心地が滑らかで、耐久性と保温性にも優れた生地となります。
例 ゼニアのトラベラーやトロフェオ、15ミルミルなど
通気性の高い平織りは夏物、ツヤのある綾織りはスリーシーズン(春・秋・冬)と覚えておきましょう。
1-3. 価格でスーツ用の生地を選ぶ
生地の価格の違いは、糸の細さによって変わります。
「スーパー120」などの数字を耳にしたことがあると思いますが、これは糸の細さを表しています。
数字が上がれば上がるほど、より細い糸を使用している高価な生地だということになります。
では、高級スーツを着たいと思ったら細糸で織られた生地を選べば良いのか?というとそうではありません。
よく間違われるのですが、高級な生地=丈夫な生地ではありません。
細い糸で織られた生地は触り心地は滑らかですが、細糸だけに耐久性はそれほど高くありません。
高級生地=繊細です。
カシミアと、ウールのセーターの違いに近いものがあります。
カシミアのセーターは肌触りが良くて高価ですが、手荒に扱うとすぐに傷みます。
一方、ウールのセーターは肌触りはそこそこですが、耐久性は抜群です。
肌触りの良さを求める人には細糸で織られた高級生地がおすすめです。
耐久性を求める人にはしっかりと太さのある糸を使用した生地を推奨します。
スーツに何を求めるかによって、選ぶ生地が変わってきます。
2. 良いスーツ生地と悪いスーツ生地の見分け方
おさえておきたいのが、「実際にお店に行った時にどうやって生地を選ぶのか」ということです。
お店での見るべき注意点とポイントについて説明します。
2-1 見た目でスーツ生地の良し悪しを判断
高級な生地はツヤがあります。ウール100%なのにシルクが入っているかのようなツヤ。
細い糸を使用して、なおかつ糸の原料が良い場合にツヤが出ます。
見た目で判断するには生地表面にツヤがあるかどうかを確認することです。
感覚的ですが、人工的ではなく自然に発する光沢です。
上質な生地はギラギラと品のないツヤではなく、上品でいかにも質が良いと感じられる光沢を携えています。
2-2. 生地のSUPER表示で見分ける
生地を形成している糸には太さがあり、それによって価格が決まります。
糸が細くなればなるほど価格は高く、高級生地として扱われます。
糸の太さは生地の耳といわれる部分に「スーパー表示」があります。
この数字が大きければ大きいほど、より細い糸を使用しているということになります。
例えば、スーパー100とスーパー120とでは、後者が前者よりも細い糸で織られた生地となります。
言い換えると、数字が大きいほど高級な生地であるといえます。
糸の細さも重要ですが、密度にも注目する必要があります。
糸がギッシリと100本詰まった生地と、80本しか使っていないスカスカの生地とでは触り心地にかなりの差が出ます。
使用する糸の本数が多い方が、生地にハリが出て価格も高くなります。
「イタリア製の生地を使用して◯万円!」といった激安スーツには騙されないようにしましょう。密度が重要です。
2-3. スーツ用生地を触って見分ける
次にするのは、「実際に生地を触ってみる」ことです。
オーダースーツのお店に行けばズラリと生地が並んでいます。
まずは生地に触ってみましょう。
「スーツ生地の表を見る」
生地には裏と表があって、生地の表側はきれいにカットされてツヤがあります。逆に外側の毛足は長い状態です。
店頭に並べる時は汚れないように生地の表が内側になっていて、生地を広げると生地の表を見ることができます。
生地の裏では光沢も色柄の出方も表とは違います。
オーダースーツで生地を決める場合は、必ず生地の表を見て判断しましょう。
「スーツ生地の柔らかさの確認」
良い生地かどうかを見分けるには、触ってみる必要があります。
細い糸を使っている生地は触り心地がソフトです。フワッとしていて指通りもなめらか。
ただ、ここで注意が必要です。生地は柔らかければ良いわけではありません。
柔らかいだけではスーツにした時にクタッと型崩れしてしまいます。
生地は柔らかな触り心地とともに、生地にハリがないと良いスーツができません。
指を生地の横からスッと入れて、弾力があるかを確認します。
ぺしゃっとしてしまう生地ではなく、指先にハリやコシを感じられる生地が良い生地です。
「スーツ生地全体の雰囲気の把握」
生地の光沢感も確認し、生地にハリがあることもわかったら、色柄を決めます。
どの色柄の生地にするか、悩ましいところ。
既製品と違ってスーツの形になっていないので、どんなスーツになるのかを生地からイメージする必要があります。
スーツをオーダーするのに慣れていないと、難しいかもしれません。そんな時には生地を広げて肩から掛けましょう。
顔映りや生地の全体像を見ることができるので、イメージしやすくなります。
3. こだわりのオーダースーツ生地ブランド
イタリア製スーツ生地
ファッション業界において世界のトレンドリーダーであるイタリア。
この地で生み出される生地は、表現力豊かな色柄が多く、バリエーションに富んでいます。
生地はしなやかでソフトな触り心地で、仕立てられるスーツの生地表面にはツヤが広がって、エレガントなたたずまい。
身体のラインを現すドレープ感と軽やかな着心地が味わえます。
エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)
1910年に北イタリアで創業した服地メーカーで、最高級のプレタブランドでもあります。
「最高の生地は最高の原料から」という考えのもと、オーストラリアの最高級の原毛を買い付けて生地を作ります。
世界のトップブランドに生地を供給し、イタリアの生地メーカーの中でも一際目立つ存在です。
ロロ・ピアーナ(Loro Piana)
イタリア毛織産業の中心地であるビエラ地区で180年以上の歴史ある生地メーカーです。
最良メリノウールの称号を獲得するなど世界中で高い評価を受けています。
ロロピアーナ社は、カシミアやビキューナなどのラグジュアリーな商品を中心に取り扱っています。
カノニコ (CANONICO)
イタリアのビエラ地区にあるカノニコ社は、1663年創業の生地メーカー。
高品質でありながら比較的安価な生地なので、多くの日本のアパレルメーカーが使用しています。
イギリス製のオーダースーツ生地
スーツ発祥の地、イギリス。
イギリスの生地は、光沢を抑えたかっちりとした触感が特徴。
仕上がりもイタリアの生地を使用したスーツに比べると、重厚感のあるスーツに。
耐久性に優れており、シワになりにくいスーツとして人気があります。
流行に左右されない質実剛健さを実感でき、着込むほどに身体に馴染んでいく生地です。
ドーメル(DORMEUIL)
ヨーロッパで上質な素材を提供し続けてきたメンズ専門の最高級生地メーカーです。
「最高品質を最高のおもてなしで」という指針の通り、高品質の生地を作り続けて世界80か国以上に供給しています。
テイラーロッジ(Taylor Lodge)
1883年にイギリスのハダースフィールドにて創業。
ベテランの職人による手間をかけて織られた生地は、世界中から評価を得ています。
生産効率よりも生地の品質にこだわり続ける姿勢は、生地品質にそのまま表れています。
アルフレッド・ダンヒル(dunhill)
英国製生地として有名だったダンヒルですが、2015年を最後に生地の販売を終了しています。
4. オーダースーツを作る際に検討すること
自分の満足のいく生地が見つかったとしても、「仕立て」によってスーツ全体の雰囲気は変わってしまいます。
オーダースーツを作る際に重要な「仕立て」について説明していきます。
4-1. オーダースーツと既製スーツを徹底比較
スーツは大きく分けて、既成品とオーダーメイド(オーダースーツ )の2つがあります。
既成品はすでに完成した状態でお店に並べられているスーツで、オーダースーツは注文を受けてから作るスーツです。
既製のスーツ
アパレルメーカーが自社のサイズ規格で生産したスーツのことです。
百貨店や量販店で売られているスーツがそれで、吊るしのスーツとも言われます。
すでに出来上がっているので、着用時の姿を確認することができます。
裾さえ直せばすぐに着ることができるという手軽さから幅広い年代に受け入れられています。
価格はブランドによって違いがありますが、値札通りの明朗です。大量生産することによってコストを抑えることができるので、お値打ちに購入できます。
ただ、店頭に並べるスペースが限られているため、選択可能な色柄やサイズに制限があります。
そのため、色柄、デザイン、サイズ感などすべてを希望通りの一着を選ぶのは難しいといえます。
オーダースーツ
採寸したデータをもとに、自分の身体に合ったスーツをゼロから作ります。
着丈、袖丈、胴回り、ウェスト、股上、股下の長さなど自分の好みのサイズのスーツを手に入れることができます。
オーダーのレベルが上がれば上がるほど、細かな体型補正も可能となり着心地の良いスーツを作ることができます。オーダーのレベルについては後述します。
また、数十種類の生地の中から好きな生地を選ぶことが可能です。
ボタンや裏地など細かな部分に自分の好みを反映させることができるのもオーダーならではの醍醐味です。世界で自分だけの1着を手に入れることができます。
デメリットとしては出来上がるまでに時間がかかること。
注文を受けてから1着ずつ作っていくので約1ヶ月ほどの納期を要します。
4-2. オーダースーツの種類
オーダースーツと一口に言っても、いろいろな種類があります。
オーダースーツを大きく分けると「パターンオーダー」「イージーオーダー」「フルオーダー」の3つ。
3つともオーダーなので好きな生地を選ぶことができ、デザインの選択も可能です。
サイズも身体に合わせて作れますが、3種類のオーダーで精度に違いがあります。
「パターンオーダースーツ」
既製品の型紙と、工場の既製服生産ラインを応用して作るため、値段も抑えられた一番手軽なオーダースーツです。
一番体型に近いサンプルスーツを着用して、上着の長さや袖丈、スラックスのウエストや股下などを調整していきます。
既製品体型の方にはおすすめのオーダーシステムです。
決められたパターンサイズから作るので、オーダーといえども体型によってはまったく合わない場合もあります。
出来上がりまでの期間は、平均で3週間〜1ヶ月ほどです。
「イージーオーダースーツ」
パターンオーダーよりも細かなサイズ補正を入れることができるのが、イージーオーダー。
細分化された型紙の中から一番近い型に合わせて、体形補正を入れることができます。
イージーオーダーでは「撫で肩」や「怒り肩」などの体型補正ができます。
好みの生地やデザインなどをリクエストできるので、自分だけのオリジナルスーツが完成します。
比較的安価で、早くて、自由度も高いので、オーダースーツの入門に最適のシステムです。
「フルオーダースーツ」
3つのオーダーシステムの中で高価なのがフルオーダーです。
お客様の身体の細部を採寸し、怒り肩や撫で肩、反身や猫背などの補正データを加味して型紙を作ります。
フルオーダーであれば仮縫いという工程が必ず付いています。
型紙をもとに生地をパーツごとに裁断して、それらを手作業で縫いつけて仮縫いを作ります。仮縫いによってさらに細かく補正を入れていきます。
完成までに仮縫いを含めて1ヶ月半から2ヶ月を要します。
手間もコストもかかるので時間とお金もかかりますが、世界で一つだけのオリジナルのスーツを作ることができます。
5. 生地とオーダースーツのポイントのまとめ
オーダースーツ を作る際に重要なのが「生地選び」と「仕立て」です。
オーダースーツのスーツの価格はこの2つの組み合わせで決まります。
「生地」にはイタリア製、イギリス製、国産生地があり、それぞれ長所と短所があります。
自分の理想とするスーツはどんなさわり心地で、どんなシルエットなのだろうかと、ゆっくりと吟味してみてください。
良い生地を選べば、出来上がった時に光沢のある上質なスーツになります。
ただ、良い生地は値段も高いでので、予算に合ったスーツは作るには妥協をしないといけないかもしれません。
「スーツ生地」と「仕立て」はバランスが重要です。
ゼニアなどの最高級の生地を使って、仕立てはイージーオーダーでというのはバランスが良くありません。
ゼニアの生地の良さを活かすにはフルオーダーレベルの仕立てが必要となります。
「生地」と「仕立て」の組み合わせはバランス良く考えましょう。
身体にフィットしたスーツの着心地は何着作っても気持ちが良いものです。新しいスーツはそれだけで気持ちを上げてくれます。
身近なパターンオーダーやイージーオーダー、またはフルオーダーでオーダースーツを楽しんでください。