オーダースーツを作るとき、迷う人が多いのが素材選びです。素材や生地の特徴や選び方を知っておくと、オーダースーツ作りに活かせます。この記事では、スーツの生地の種類や選ぶときのポイントを解説します。オーダースーツの作成やスーツ購入を検討している人はぜひ参考にしてください。
スーツの生地の主な産地は3つ
二大産地と呼ばれるイギリスとイタリア、それに加えて日本が代表的なスーツの生地の産地です。イギリス産の生地は、英国羊毛を使い双方の糸で織り上げています。ハリコシがあり耐久性が高く、色あいが落ち着いていることが特徴です。
イタリア産は、単糸の生地が多く、しなやかで、光沢が浮き上がり色あいが鮮やかなものが多いです。日本の代表的なスーツ生地の産地は尾州です。日本産の生地の特徴は、イギリス産の生地のような堅牢さを持ちながらも、リーズナブルな価格で手に入ることです。
代表的な天然繊維のスーツ生地・素材の種類
天然繊維のスーツ生地のなかでも、代表的な生地の種類と特徴を解説します。
ウール
ウール(羊毛)は、スーツ生地に使われる代表的な素材です。特有の自然な温かみと保温性の高さに加えて、伸縮性や弾力性、耐久性も兼ね備えています。しわになりにくいため手入れしやすい点も魅力です。
一方で、虫がつきやすく傷みやすい特徴もあるため、ウールのスーツ生地は防虫対策が必要になります。
シルク
シルクは、蚕の繭からとれる天然素材です。スーツの生地に用いる場合には、ウールなどと混合して使用されます。光沢があって美しく、なめらかで肌触りがよいのに加えて、吸湿性、保温性、放湿性に優れていることが特徴です。静電気が起きにくいというメリットもあります。
欠点は、摩擦に弱く、耐久性が低いことです。シルクとほかの素材との混合生地の場合、雨に濡れるとシルクの部分だけ型崩れしてしまう場合があるので、注意が必要です。
カシミヤ
カシミヤは、中国北西部、内蒙古、外蒙古、イランなどに生息するカシミヤヤギの毛をもとにした素材です。ウールよりも繊維が細かく上品な光沢があり、着心地も快適です。薄く軽いにも関わらず暖かいため、秋冬用のスーツに向いている素材です。
一方、毛玉ができやすくデリケートで、取り扱いには注意が必要です。また、スーツ素材のなかでは価格が高めです。
コットン
コットン(綿)は、衣料品のなかでも幅広く使われている素材です。熱に強く、耐久性や吸湿性に優れている特徴があります。ウールとは違うカジュアルな風あいで、プライベートでの着用に向いています。注意点として、コットン素材のスーツはしわになりやすい性質があります。また、水洗いをすると縮んだり色落ちしたりする場合があります。
リネン
リネンは麻を素材とした生地です。ヘンプやカラムシなどの種類もあります。さらっとしたドライな肌触りと着心地が特徴で、吸湿性や放湿性に優れています。汗をかきやすく、湿気の多い春夏のスーツ生地に向いています。
一方でしわになりやすい素材であるため、リネンのスーツはしっかりとしたケアが必要です。
モヘア
モヘアはアンゴラ山羊の獣毛を素材にした生地です。繊維が太くて硬いためハリコシがあり、美しい光沢が楽しめます。しわになりにくく耐久性もあり、実用性も高い素材です。通気性が高いため日本では春夏用のスーツ素材として使用されてきましたが、現在では3シーズン着用できるものもあります。
ウールは織り方によって種類が異なる
ウール(羊毛)は、スーツの代表的な素材であり、織り方によっていろいろな種類があります。ウールの織り方による生地の種類を解説します。
フランネル
フランネルは、紡毛糸を使い、表面を起毛させた素材です。保温性に優れているため、秋冬用のスーツ生地に多く用いられています。特に英国製のヴィンテージフランネルのスーツは、着込めば着込むほどやわらかくなり、体になじむ点が魅力です。
サキソニー
サキソニーは、生地の感じはフランネルと似ているものの、フランネルよりもやや薄手で柔らかい生地です。秋冬用のスーツに使用されることが多いです。もともとドイツのザクセン地方で織られていたことから、サキソニーの名前がついたといわれています。
ツイード
ツイードは、ざっくりと織られた厚手の紡毛織物です。ごわごわとした手触りと素朴な風あいが楽しめるため、男らしさやカントリーテイストを取り入れたいときに向いています。秋冬用のスーツ素材に用いられています。
メッシュ
メッシュは、目を粗くざっくりと織った生地です。透け感があり通気性が高いため、春夏用のスーツ素材に向いています。反発力があり、しわになりにくい点も魅力です。
代表的な化学繊維のスーツ生地・素材の種類
高品質なオーダースーツは、天然素材100%で作られる場合が一般的です。しかし、 使用目的にあわせて、機能性の高い化学繊維と天然素材の混紡を検討するのもおすすめです。ここでは、代表的な化学繊維のスーツ生地を紹介します。
ポリエステル
ポリエステルは、化学繊維のなかで最もポピュラーな素材です。丈夫でしわになりにくい特徴を持ち、実用性が高いです。光沢感のある風あいも楽しめます。一方で、静電気がおきやすく、吸湿性が低い素材です。
ナイロン
ナイロンは、丈夫で伸縮性があり、軽い素材です。摩擦や折り曲げに強く、しわになりにくくなっています。乾きが早いため、お手入れもしやすいです。一方で静電気が起きやすい、熱で変形してしまう、吸水性が低い、日光で黄ばむといったデメリットがあります。
レーヨン
レーヨンは、絹の質感をめざして作られた素材です。肌触りがよくて吸湿性が高く、光沢もあります。スーツの裏地としてもよく使用されています。水に濡れると強度が低下し、しわや縮みの原因になるため、お手入れに注意が必要です。
生地タグの見方とは
購入したり作成したりしたスーツの生地にはタグがついていて、生地の産地やブランド、素材が確認できます。ウールのみに使われる、原毛の総合的な品質ランクのSuper表示は、糸に使われている原毛の細さを表しています。Super表示の単位が10上がるごとに原毛が0.5ミクロン細くなり、生地が高価になっていきます。
スーツ生地は織り方も重要
スーツは生地の織り方によって風あいが変わってきます。ここでは、スーツ生地の織り方の種類を解説します。
平織
平織は、たて糸とよこ糸が1本ずつ交差する、基本的な織り方です。平織は丈夫でしわになりにくいため、実用的な織物に多く使われています。通気性もよく、夏物にも使用されています。
縦織
縦織は、たて糸、よこ糸を2~3本交差させることで、糸の織り目が斜めになる織り方です。縦織の斜めにならぶ織り目は斜文線と呼ばれています。平織と比べてなめらかで光沢がある風あいと、柔らかい感触が特徴です。
繻子(朱子)織り
繻子(朱子)織りは、たて糸、よこ糸のどちらかが5本以上で、上下左右で糸の交差する点を隣りあわせにしないようにする織り方です。なめらかで光沢がでるため、サテン生地などに使われています。フォーマルな衣類に多く使用されています。一方で、糸の交差が少ないため、しわになりやすく型崩れしやすいといい点もあります。
スーツ生地を選ぶポイントとは
スーツ生地は種類によって異なる特徴があります。スーツを購入するときや、オーダースーツを作成するときに覚えておきたい、スーツ生地を選ぶポイントを解説します。
産地で選ぶ
堅牢で厚手、落ち着いた風あいのイギリス産、なめらかで華やかなイタリア産、イギリス産のように堅牢でありながらリーズナブルな日本産と、産地によって異なる生地の特徴から選ぶ方法もあります。もちろん、好みの産地で選ぶのもよいでしょう。
有名ブランド生地から選ぶ
生地には、有名ブランドのものもあるため、その中から選ぶ方法も有効です。ただし、有名ブランドでも生地ごとにランクが異なり、質や風あい、価格などが異なるため、選ぶときには注意しましょう。
ブランド生地なら「ゼニア」がおすすめ
イタリアを代表するファッションブランド「ゼニア」は、1910年生地メーカーとして発祥しました。現在ゼニアの生地は、ハイブランドを含めた高級紳士服の30%に使用されています。
オーストラリアから買い付けた最高級の天然繊維のなかから、希少なウールだけを厳選して織りあげた生地は、上品なツヤとなめらかな手触りがあり、遊び心のあるおしゃれなデザインも魅力です。
季節にあった素材を選ぶ
スーツのデザインは1年を通して同じであるため、着用する季節にあった素材を選ぶことが重要です。春夏の暖かい季節のスーツは、堅くて通気性も高いウール混合のカシミヤや、涼し気な印象も得られるリネン混合などが向いています。
秋冬の寒い季節のスーツは、保温性の高いフランネルや薄手ながら暖かさもあるサキソニー、保湿性と保温性に優れていて軽いカシミヤなどが向いています。
糸番手と織り密度を確認する
ウールなどの原毛は紡いで糸にします。その糸の細さを表す数字が、糸番手です。数字が高いほど細くなり、きめ細やかで肌触りもなめらかになります。また、糸の密度は糸の本数が多いほど硬くてしっかりとした質感の生地になり、逆に少なくなればソフトで軽い質感の生地になります。
糸番手と糸密度のバランスで、生地の質感が決まります。自分でベストな質感の生地を選ぶのは難しいため、好みの質感を伝えてテーラーに選んでもらうとよいでしょう。
光沢を確認する
生地の光沢は、実際に触ったり見比べたりしないと分かりません。同色のスーツ同士で見比べて、光沢の差を確認しましょう。その際、光沢の度あいがわかるように明るいところで見比べることが大切です。
ストレッチ性を確認する
動きやすいスーツは着心地のよさにもつながるため、伸縮性を確認することもポイントです。動きやすさを重視して選ぶ場合は、伸縮性の高いポリウレタン系のライクラ・スパンデックスや、耐久性のあるポリエステル系のソロテックスを使ったストレッチスーツを選ぶとよいでしょう。
柔らかさを確認する
質のよい生地には、柔らかさがあります。スーツの袖をつまんで柔らかさを確認し、柔らかくてソフトな感触のものを選びましょう。
生地を身体にあてて顔映りを確認する
生地見本だけではなく、実際にスーツの生地を体にあててもらいましょう。体にあてることで、立体的な見え方や顔映りが確認できます。肌とスーツの色味の相性を見て、自分の肌の色が映える色を選びましょう。
スーツにおすすめの生地
スーツにおすすめの生地を紹介します。スーツの生地選びに役立ててください。
【3シーズン着用可能】トロフェオ
ゼニアの代表的な生地であるトロフェオは、最高品質のスーパー130の極細の繊維を使用しています。表面には自然で上品な光沢があり、しっとりとしていて柔らかい手触りです。夏を除いた3シーズン着用できる、上質さと軽さを兼ね備えています。
TROFEO1~最新ゼニアコレクション2020秋冬|ゼニアパートナー【オーダースーツ のスプレーモ】
【夏におすすめ】Cool Effect(クールエフェクト)
クールエフェクトは生地の染めと仕上げの段階で特殊なトリートメント加工をほどこしていて、太陽光を80%反射し、表面温度を10度下げる夏向けの機能性生地です。人工的な風あいはなく、自然で上質な雰囲気が楽しめることも魅力です。
まとめ
スーツの生地は、生地それぞれの特徴や産地だけではなく、実際に生地に触れて、柔らかさやストレッチ性、光沢などを確かめて選ぶことが重要です。生地を選ぶときは、テーラーに体にあててもらうのも忘れないでください。
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