始まりは時計メーカー
エルメネジルド・ゼニアはもともと、北イタリアで 1910 年にテキスタイルメーカーとして創業。 初代エルメネジルド・ゼニアの父アンジェロ・ゼニアは、農家に生まれて時計製造を営んでいました。やがて毛織物を手がけ、4 台の織機を使いフレッチナ地区で織物製造会社を開始。しかし火事により工場を焼失し、ビエラ近くのアルプス山麓に位置するトリヴェロの地にて工場再建。これが現在のラニフィーチョ・エルメネジルド・ゼニア(ゼニアの服地工場)の基礎となりました。
18歳の若さで跡を継いだ
エルメネルド・ゼニア氏
1910 年、アンジェロ・ゼニアの 10 番目の末息子で 18 歳の若さで家業を継いだのが、ゼニア社をイタリアで最も有名な企業に育て上げたエルメネジルド・ゼニア氏です。
ゼニアは最新の紡績機による高品質な毛織物の生産を始め、世界のマーケットに進出。最高級の天然繊維を原産国から直接買いつけ、自社の顧客のみならず世界第一線のファッションデザイナーに供給できる流通機構を作り上げました。そそして、ゼニア生地は 1938 年にアメリカに輸出を開始し、 1945 年には 40 カ国以上で販売されるようになりました。
ゼニア生地は素材の開発から縫製までを一貫して自社のファクトリーで手がけます。原毛の買い付けから、紡績、染色加工、ゼニア生地への製品化に至るまでをトリヴェロの工場で行っています。
cloth Ermenegildo Zegna
の販売を開始
ゼニア生地の製造販売で確固たる地位を築いた後、ゼニア生地はメンズプレタの分野にも進出。「最高の素材は優れたデザインを、最高のデザインは優れた素材を求める」というポリシーのもと、プレタポルテ(既製服)の企画販売を開始します。
ミラノとパリに最初の単独ブランドショップがオープン。コート、スーツ、ジャケット、パンツの各種ゼニア生地製品は国際的評価を得てトータルメンズブラントとしてのゼニア生地の名を不動のものにします。
1990 年代にはブランドの拡大および多角化を図り、アパレルからアクセサリーまでを展開するラグジ ュアリーブランドを作り上げます。現在ゼニア生地ショップは 80 を超える国と地域で展開し 555 店舗あります。 1977 年、日本にゼニア・ジャパンが設立。1998 年には三陽商会との共同開発によるカジュアルウェアとして EZ・BY・ZEGNA(イーズィー・バイ・ゼニア)をスタート。2003 年から「エルメネジルド・ゼニア」のブランドでシューズの発売を開始。
低かった日本での
ゼニア生地の知名度
1977 年に日本にゼニア生地が登場。ただ、百貨店ではプレタポルテの取扱いはありませんでした。そのため、ゼニア生地を知っている人はごくわずか。1996 年に銀座の旗艦店をオープンしましたが、当時人気だったのはアルマーニでゼニア生地の知名度はかなり低いものでした。
ファッション誌との
タイアップで人気爆発
しかし、ファッション誌にゼニア生地とのタイアップ広告が毎号のように大きく掲載。そして、長島茂雄氏をはじめとしたスポーツ選手や芸能人がゼニア生地のジャケットやスーツを着用し始めると、日本国内でもゼニア生地に注目が集まり始めます。
ゼニア生地のファッション性と品質の良さがアルマーニとは違うと評価されて、会社経営者や医師など VIPな方たちにゼニア生地の人気が大爆発。そして一過性の人気で終わることはなく、日本国内でも最高級ブランドとしてゼニア生地は確固たる地位を築きました。
1930 年代に高品質の毛織物生産で一躍脚光を浴び、卓越したものづくりでファッションシーンの最前線を走り続けるゼニア生地。今後もどのように多くの人にゼニア生地が評価されていくのか、またどんな革新を繊維業界に起こしてくれるのか非常に楽しみです。
ゼニア氏の探究心が生み出した
独創性豊かな生地
ゼニア生地はさまざまな機能性をもった革新的ファブリックを開発してきました。スーツの歴史に大きな影響を与えたゼニア生地の数々をご紹介します。
1964 年
18milmil18 ディチョット ミルミル ディチョット
毛の細さが 18 ミクロンの極細糸を用いたゼニア生地。自社製造のファブリックに名前をつけたのは世界初のこと。同年 17 ミクロンを用いたゼニア生地も発表し、ゼニア生地は世界最高峰の生地ブランドとしての地位を確立。
1965 年
Trofeo トロフェオ
ゼニア生地の中で最も有名で高級スーツの代名詞となったトロフェオ。 スーパーファインウールの滑らかな風合いはフォーマルなスーツに相性が抜群。90 年代にはスリ ーシーズン仕様のゼニア生地として生地が薄く進化。今なお世界中のビジネスマンが愛用しています。
1985 年
High Performance ハイパフォーマンス
強撚糸を使用することでシワを解消させる機能性ゼニア生地。普段使いにも文字通り高いパフォーマンスを発揮します。軽量さと快適さを兼ねた夏専用のゼニア生地。
1996 年
Cashco カシコ
カシミアとコットンをブレンドした軽量のカジュアル向けゼニア生地。パンツとして使用されることが多く、色展開も多彩なゼニア生地として好評。
1996 年
15milmil 15ミルミル
糸の細さが 15 ミクロンという極薄のゼニア生地。しなやかさと上品なツヤを備えた生地品質は他社とは比較になりません。最高級ラインとして今も人気のゼニア生地です。
1998 年
Traveller トラベラー
強撚糸を使用することでゼニア生地スーツがシワになりにくくしています。その名の通り、旅行や出張先で活躍するゼニア生地です。世界中を飛び回るビジネスマンをイメージとした機能性ゼニア生地の名作です。
2003 年
Elements エレメンツ
松ぼっくりが天候によって開閉するメカニズムに着目して開発されたゼニア生地。内側層のマイクロファイバーの細孔が、気象状況に合わせて自動的に温度・湿度を調節する機能性ゼニア生地。
2005 年
Traveller Micronsphier トラベラーマイクロンスフィア
蓮の葉が水を弾くのをイメージして作られたゼニア生地。撥水・防汚の機能を加えています。大自然から発想を得る、ゼニア生地が一番得意とするところです。
2009 年
High Performance Cool Effect ハイパフォーマンスクールエフェクト
太陽光の約80%を反射する仕上げを施したのがゼニア生地がクールエフェクト。これによって約10℃のクールダウン効果を実現。夏場でもジャケットを快適に着られる革新をもたらしたゼニア生地です。
2010 年
Vellus Aureum ヴェリュス オウレウム
「ヴェリュス・オウレウム・トロフィー(黄金の羊毛)」の賞を勝ち取った最高品質の原毛から 11 ミクロンの細糸で織り上げた限定ゼニア生地。創業100周年を記念た超限定販売の生地でした。
2010 年
Fablic NO.1
ラニフィーチョ・エルメネジルドゼニアが 1910 年に初めて作ったゼニア生地を復刻。ゼニア生地の原点と革新の歴史が詰まった創業100周年記念生地は 2010、2011AW のプレタポルテコレクションで販売されて好評を博したゼニア生地。
ゼニア生地が世界から
信頼される理由
このようにゼニア生地は最高品質の原毛からさまざまな機能に特化した革新的な生地を開発してきました。
ゼニア生地はオーストラリアから天然繊維のみを買い付けます。そこからさらに厳選に厳選を重 ねた繊維を、自社工場にて紡績、染色、仕上げまで一括管理してゼニア生地を作り上げます。
常に原毛を追求し続けたゼニア生地。世界のトップブランドからゼニア生地が信頼される理由は、生地と品質とスタイル、そして革新に捧げた110年の情熱にあると言えます。
Skira Editore S.p.A ※参考資料 Ermenegildo Zegna 2010