
オーダースーツは採寸が命
美しいシルエットと着心地の良さを両立できる、プロだけが持つ目と腕
「前回のスラックスよりもほんの少しだけ細めに作ってほしい」
というご注文のスーツを納品した時のことです。
「希望どおりでピッタリ!」と仕上がりにご満悦。 型紙上で削った寸法がほんの5ミリであることを告げると、 「たったの5ミリでこんなに違うんだ、凄いね!」と驚かれました。
伸び縮みする生地のわずか数ミリの寸法を大切にしながらスーツを作ります。
その基本の数字を測るために、お客さまの身体の部位を念入りに測らせていただきます。 この際には、サイズを採るだけではなく、怒り肩やなで肩、猫背や反り身といった 身体のクセも同時に把握していきます。
そしてさらに、お腹が出ているのを気にしている方であればお腹を目立たないように、 肩幅が広ければできるだけ狭く見せるようなご提案も同時にさせていただきます。
ただ単にサイズ通りに作るのであれば、安物のイージーオーダーと一緒です。 一流のスーツを作るために、サイズやシルエットの提案と工夫を一切の手抜きなく行います。

こうした提案や工夫は洋服作りに詳しいだけではできません。 全体を瞬時に見通せる目、すなわち「センス」が必要とされます。
もしも店員やフィッターがおじいさんであれば、いくらベテランであっても おじいさんのセンスで、オジサン臭いスーツが出来上がってしまいます。
美しいシルエットと着心地の良さを両立できるスーツを作るには、 採寸する技術とセンスの両方を持っていないとできません。
お伺いしたご要望のサイズ感とシルエット、そして採寸による身体のサイズ、 そして提案させていただく情報のすべてを融合して、初回ご来店後の3週間後に行う 「仮縫い」に反映していきます。
仮縫いのないオーダーは本物とは言えない
しつけ糸で仮に縫った状態でサイズ合わせをし、身体のクセとサイズを確認
本当に身体に合ったスーツは、イージーオーダーのようにサイズを合わせるだけでは作れません。 身体の細かなクセをスーツに反映させることによってジャストサイズのスーツが完成します。 そのための大事な工程が「仮縫い」です。
仮縫いとは…お選びになった生地を裁断してしつけ糸でスーツの形に仮に縫い上げます。これを着用していただき、各部のゆとりやフィット感、袖や裾の長さ、そして怒り肩やなで肩など身体のクセを確認する工程のこと。
経験豊富なフィッターであってもメジャーでの採寸だけでお客様の身体のすべてを把握することは不可能です。仮縫いのないオーダースーツは、「本物のオーダー」とは言えません。
仮縫いをすることによって、お客様はサイズ感やシルエットなど完成品をイメージしていただくことができます。お店側も仮縫いをすることで細かな微調整ができるので、完璧にフィットしたスーツに近づけていきます。
所要時間はおおよそ30分です。仮縫いは初回のオーダーの際に1度だけさせていただきます。サイズデータを保管しておりますので、2着目以降は仮縫いの必要はございません。
※大幅な体重の増減があった場合には再度の仮縫いも可能です。
時代に合わせたスーツ作り
身体に吸い付くようなスーツは、身体の長さと大きさを合わせるだけでは作れません。
スーツ作りに必要な技術は注文の際のフィッターの技術と、製造の技術に分かれます お互いの高い技術力と強い絆が高品質なスーツを生み出します。
フィッターの技術
着心地やシルエットに大きな影響を与えるサイズの好みも、お客様により千差万別です。ご満足いただけるスーツをお作りするためには、お客様がスーツに何を求めているのかを私達が共有することが重要です。
スーツを着用するシーンはお客様の数だけ存在します。仕事の業種やスーツの用途、そして環境、年齢、お手持ちのアイテムについての会話を通してお客様のお求めのスタイルの理解につとめます。
こうした理解のためにはコミュニケーションのスキルが必要です。 私たちはたくさんのお客様とコミュニケーションを積み重ねてきた経験があります。 お客様に適さないと思ったことがあれば、正直にお伝えして 妥協点を見つけます。
お客様一人ひとりと真剣に向き合って、コンシュルジュとしてあなたに最適なスーツを ご提案させていただきます。
お客さまから耳にしたことですが、担当するスタッフによって出来上がってくるスーツが異なるお店があります。 あるスタッフは見映えを優先しすぎて動きにくい程細身の仕上がりに、あるスタッフは年齢より老けて見える ゆったりシルエットに、これはお店としてスタッフ全員の価値観が統一されていないことが原因です。
こうした商品レベルのムラが起こらない様、当店では身体の実寸に基づき独自の計算方法を設け、型紙の基準値を 割り出しています。そこにお客様の好みを反映させて微調整します。どの担当スタッフが行っても同じ仕上がりに できる様にすべてを数値化しています。また、初回採寸、仮縫い、お直し採寸とそれぞれをマニュアル化し、 全スタッフに対して定期的にテストを行っているため採寸スキルは高レベルを維持しています。
製造技術
当店のスーツはすべて国内での製造です。
これからの流行のスタイルやお客様からのご要望について、職人と定期的にミーティングを行っております。時代に合わせたスーツ作りをするためには、こうした職人とのコミュニケーションが欠かせません。
この環境こそがスーツ作りに大事な感性や伝統と流行のバランスを上手く融合させることにつながっています。
スーツの良し悪しを左右する縫製技術です。ミシン縫い工程と職人による手縫い工程とパーツにより最適な手法を用いています。 英国製の生地の様に硬い生地は安定して針を通せますが、ゼニアのような柔らかい生地は経験の浅い職人には扱いが難しく高い縫製技術を要します。
また、オーダースーツは一着ずつ生地やサイズも異なるため、同じスーツを短期間で作る既製品のようにリズムよく縫う ことができません。 お客様の仕様や体型に合わせた縫製を行うため、一着のスーツの制作に時間をかけて縫い上げています。
良い素材や丁寧な縫製など目に見える部分に力を入れるだけではなく、見えない部分の芯にもこだわっています。毛芯には本バス毛芯を使用しています。
毛芯は柔らかさとハリがあるためスーツを立体的に見せ、着続けることで身体の形に馴染んでいきます。前身頃のエリ部分で留めて、ほとんどの部分が浮いた状態、つまり生地の中で芯地が動くようになっています。こうすることでジャケットは立体的に仕上がり、エリが美しい曲線を描きます。最高級のゼニア生地のスーツを作るために、副資材の選定にもこだわりを持っています。
生地+トレンド+コーディネート
ゼニアの生地を熟知したスタッフがお客様に最適なスタイルをご提案します。
生地の知識
当店は現在、ゼニアの生地を専門として取り扱っていますが、1888年の創業から現在に至るまで、時代のニーズにマッチする様々な生地を取り扱ってきた経緯があります。イタリア製生地や、イギリスの生地、国産生地といったゼニア社以外の生地でスーツを仕立てた経験から、ほぼ世界中の生地の特性を熟知しています。
また、私自信が生地の製造卸メーカーにて修行を積んでおり、実際に国内外の工場で生地を生産しておりました。原毛の選定から始まり、原毛を紡いで糸にし、染色、織り、仕上げという段階を経て生地が出来上がるまでの各段階の工程が理解できているからこそ、ゼニアの生地が世界品質として間違いのないものとしてお客さまにおすすめしております。そしてゼニアの価値を理解し、なぜ今ゼニアが良いのか、他の生地と何が違うのかという理由を明確にして販売を行っております。
トレンド知識
スーツには”素材””カラー””デザイン””サイズ感””コーディネート”などトレンドがあります。数年周期で変化がありますが、婦人服に比べて紳士服は大きな変化が見られません。小さな変化ゆえに、気付かずに同じようなスーツを着続けてしまう男性もたくさんいます。オーダーだから安心と、5年以上も同じサイズと同じスタイルで作っている方は注意が必要です。スーツを作る技術が高いお店でも、トレンドを意識していないお店がたくさんあります。同じスーツ業界として残念なことですが、現にバブル期に流行したようなデザインのオーダースーツがいまだに出回っています。
私たちは国内外のファッションの展示会で情報を収集しています。また、スーツに関連する紳士雑貨業界や紳士カジュアル業界との交流も盛んなため、1年、2年先のトレンドを把握したスーツを常に考えています。衣・食・住と言われるように、スーツはその一部です。専門外ではありますが、私たちなりに世の中のトレンド知識を蓄え、ライフスタイルを豊かにするスーツのご提案もしています。
テーラーが満足するスーツを提供することは当たり前です。お客さまに極上のライフスタイルを送っていただけるような上質なスーツを提供していきます。そのためにスーツにまつわる専門的な知識をお客様に合わせてお伝えすることを心がけています。いつの時代でも大切なことは一緒ですが、現代に合わせた必要な知識を日々蓄積し、バージョンアップした情報を今後も伝えていきたいと思っています。
コーディネート知識
コーディネートをするのは一番楽しいことですが、一番難しいことでもあります。着ているスーツがいくら良くても、シャツやネクタイのコーディネートが悪ければすべてが台無しになってしまいます。
スーツのコーディネートは大きく2つに分けて考えることができます。
1つは日常の着回しのポイントです。自分の好みや感性のみでコーディネートを考えていくといつも同じようなスーツスタイルになりがちです。客観的な視点で、月曜日から金曜日までの1週間分のスーツやシャツの揃え方のアドバイスも可能です。
2つ目はイベント用のコーディネートです。現代の冠婚葬祭は以前と違って様々なスタイルがあります。そのシーンに応じたコーディネートを考える必要があります。式典や講演会、撮影に合わせたイメージを作り上げるご相談も承っております。ご要望をお伺いして、ご着用シーンにふさわしいスタイリングを提案いたします。