「せっかくコートをオーダーするのに、失敗したくない」
「決して安くはない買い物だから、後悔したくない」
コートをオーダーしようとお考えの方なら、当然の不安だと思います。
オーダーコートの失敗は、実はいくつかの決まったパターンに集約されます。
1888年創業の銀座のオーダー店として、これまで数多くのコートをお作りした経験から、「どんな失敗が起きるのか」「どうすれば避けられるのか」をお伝えします。
1. そもそもコートは、洋服で一番「買い物が難しい」

本題の前に、ひとつ知っておいていただきたいことがあります。
洋服の中で、買い物の失敗率が最も高いと言われるのがコートです。
コートは全身で一番大きなアイテムです。ここで失敗すると、コーディネート全体が崩れ、せっかくのスーツも台無しになってしまいます。
そして、コートには独特の落とし穴があります。
コートはよほどのことでは壊れません。5年、10年、15年と着続けることができます。
ですが、10年前のコートを引っ張り出してみると、デザインが古くて着られない…。そんな経験はないでしょうか?
コートで大切なのは、
「消費期限」(何年もつか)ではなく、「賞味期限」(何年おしゃれに着られるか)です。
コートは消費期限が長いぶん、賞味期限が切れても着てしまいがちです。これが、コートの失敗の正体です。
賞味期限を決めるのは、シルエット、つまりサイズ感です。
たとえば、ひと昔前に流行したショート&タイトのコートは、今見ると窮屈な印象に見えます。その後に流行した肩の落ちたルーズなコートも、今ではサイズの合っていない大きなコートに見えてしまいます。
長くおしゃれに着たいなら、流行に左右されない、体に合ったコートサイズの一択です。
では、それを踏まえて、オーダーコートの失敗を見ていきましょう。
2. オーダーコートの失敗は、ほぼこの3つ
これまでの経験から申し上げると、オーダーコートで「失敗した」と感じる原因は、ほぼ次の3つに集約されます。
- 袖丈・着丈が合っていない
- シルエットが野暮ったい
- 生地選びを失敗する
逆に言えば、この3つさえ押さえておけば、オーダーコートで大きく失敗することはほとんどありません。
一つずつ見ていきましょう。
3. 失敗その① 袖丈・着丈が合っていない

オーダーコートで最も多い失敗が、これです。
袖丈は、ほんの数センチの違いで印象が大きく変わります。
袖が長すぎれば、だらしなく見えます。短すぎれば、寸足らずな印象になります。
このさじ加減は、既製品やネット注文ではなかなか合わせきれません。
既製品のコートは、平均的な体型を想定して作られています。腕の長さは人それぞれですから、「着丈は合っても袖が合わない」ということが起こります。
ネットでのオーダーも同様です。ご自身で採寸した数値では、実際に着たときの「のぞき具合」まで調整しきれません。
当店のようなオーダー店では、仮縫いやサンプルコートを実際に羽織っていただき、中に着るジャケットとのバランスまで見て、ミリ単位で袖丈を調整します。
袖丈の失敗は、こうした工程での「確認」があるかどうかで決まります。
コートの袖丈については、こちらの記事でも詳しく解説しています
4. 失敗その2:シルエットが野暮ったい

「コートを着ると、なんだか野暮ったい」
これも、よくある失敗です。原因の多くは「着丈」と「シルエット」にあります。
コートの着丈は、長すぎても短すぎてもバランスが崩れます。身長や脚の長さ、中に着るスーツとの兼ね合いで、最も美しく見える着丈は一人ひとり違います。
既製品の限られたサイズ展開では、「ちょうどいい着丈」に出会えないことが少なくありません。
肩が落ちていたり、身幅が余っていたりすると、途端にだらしない印象になります。
特にチェスターコートのような正統派のスタイルは、きれいなシルエットでこそ美しく見えるものです。
1章でお伝えした通り、トレンドを強く意識したデザインは数年で古びます。
長く美しく着られるのは、流行に左右されない正統派のシルエット。チェスターコートのような王道のスタイルは、何年経っても装いを上品に保ってくれます。
5. 失敗その③ 生地選びで失敗する

3つ目の失敗は、生地選びです。
コートは、本来長く着るためのものです。ところが、見た目の印象だけで生地を選んでしまうと、「思ったより重い」「シワになりやすい」「すぐ毛羽立った」といった後悔につながることがあります。
当店が、ビジネスコートの生地をカシミヤとウールに絞っているのには理由があります。
この2つの素材が、「上品な見た目」と「長く着られる実用性」を最もバランスよく備えているからです。
カシミヤは、しっとりとした艶と上質な風合い。ウールは、丈夫で扱いやすく、シワにも強い。
ビジネスの場で長く着るコートとして、この2つは間違いの少ない選択です。
6. オーダーと既製品、どう使い分ける?

ここまでオーダーの話をしてきましたが、正直にお伝えします。
すべてのコートをオーダーで作る必要はありません。
定番のコートは、オーダーで
長く着る正統派のコート。
たとえばひざ上丈のチェスターコートは、体に合ったジャストサイズで仕立てる価値があります。
トレンドに左右されないサイズと生地で作るからこそ、賞味期限の長い、コストパフォーマンスの高い一着になります。
生地を選んでからデザインを決められるので、「この生地でこのデザインがあれば」という既製品の悩みもありません。
トレンドを楽しむコートは、既製品で
ルーズシルエットやショート丈など、今の気分を試したいコートは、試着してイメージを確かめられる既製品が向いています。
ダウンや機能素材のコートも、既製品のほうが選択肢が豊富です。
まず定番の一着をオーダーで持ち、そのうえでトレンドは既製品で楽しむ。
これが、コートで失敗しない買い方です。
7. 「10年で500着、お直しゼロ」という事実

最後に、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
当店では、過去10年間に500着以上のカシミヤのコートをお作りしました。
そのなかで、お直しの依頼をされた方は、まだ一人もいらっしゃいません。
これは、わたくしどもの仕立てが完璧だと言いたい訳ではありません。
仮縫いをしっかり行い、袖丈、着丈、シルエットをお客様の体型に合わせて調整する。その積み重ねが、結果としてこうした実績につながっています。
オーダーコートで失敗したくない。この思いにお応えして、わたくしどもにできることを丁寧に積み重ねてまいります。
8. オーダーコートをご検討の方へ
まずは、実際にゼニアのカシミヤ100%の生地に触れ、ご自身の目でお確かめください。
スプレーモは、明治21年(1888年)に岐阜で創業し、136年にわたってオーダー店を営んでおります。
銀座の店舗では、ゼニアのカシミヤコート生地を実際にご覧いただけます。
完全予約制にはなりますが、どうぞお気軽にご予約ください。

